物心ついたころから背が低く、小学校に入学しても身長は低いままでした。

幼いころは女子の方が男子よりも成長が早いと聞かされていたにも関わらず、身長が劇的に伸びる気配は一向になく、五年生になっても低いままでした。身長が伸びるどころか、成長するにつれ低い身長をからかわれる日々で、ついにはコンプレックスの塊のようになってしまったのです。

そんな時に私が唯一興味を持ったことが、バスケットボールでした。
背が低いくせになぜ？と思われがちですが、背が低いからこそ高身長の人たちへのあこがれは強かったのです。そんな高身長の人たちから繰り出されるパスやシュートに、とてつもないほどの魅力を感じ、自分もやってみたいと強く思うようになりました。

地元の小学生や中学生で活動しているバスケットボールのスポーツ少年団があり、そこへ入団することを考えたのですが、友達には大反対されました。身長が低いのに、どうしてバスケットボールなんてするの？という素朴で当たり前ともいえる疑問が、友人の頭から離れなかったようです。

そんな身長でバスケットボールなんてすると、なおさらからかわれるだけだと、私を心配しての反対でした。悩んだ挙句今度は両親に相談すると、両親は何の反対もせず、むしろ入団を勧めてくれたのです。友人の反対を気にしつつも、両親の後押しを得てさっそく入団の手続きに行きました。

ですが、行ってすぐに現実を思い知らされることとなりました。
そのバスケットボールのスポーツ少年団は、とても人気のある少年団で、入団希望者が毎年多いため、簡単なテストをして合格した人だけしか入団できないというのです。それを聞かされた時、頭を殴られたほどの衝撃とショックを受けたことを今でも覚えています。
自分のこの低い身長では、門前払いを食らうだけだと思ったからです。

テストは、基本的な運動能力テストとバスケットボールに関する運動能力テストの、2部構成からなるテストだと知らされました。そこで、さらにやる気をなくしてしまったのです。基本的な運動能力テストだけならまだしも、バスケットボールがまったくの初心者である自分には、バスケットボールに関するテストなんてパスできるわけがないと意気消沈してしまったからです。

それでも両親の強い勧めもあり、テストを受けるだけ受けることになりました。とりあえず、基本的な運動能力テストは合格することができたのです。その後に実施される、問題の2つ目のバスケットボールのテストを控え、違う部屋で待機していた時のことです。内心、ここでやめて帰ろうかとさえ思っていました。

そんな時、ふとある人に声をかけられたのです。「君は、身長が低くて動きが俊敏だから合格」と。声をかけてきたのは、その少年団の顧問とコーチを務める男性でした。思いもよらず急にかけられた言葉の意味を、すぐに理解することができずに唖然としていると、もう一度「合格！」と言われたのです。

なんと驚くことに、身長が低いという理由だけで合格になったのです。
もちろん最初の基本的な運動能力の結果も見たうえでの判断ではあったそうですが、身長が低いことが何よりも合格の決め手になったと聞かされました。これまで、身長が低いことでからかわれ、嫌な思いをすることはあっても、こんなに嬉しい思いをしたことは経験がありませんでした。心の底から、身長低くてよかった！と思えた瞬間でした。

後から詳しく聞いた話によると、この顧問の男性は今年から就任した顧問で、その戦術により、あえて身長の低いポイントガードを探していたそうです。身長が低ければ、動きが俊敏で小回りが利くというメリットがある可能性はありますが、身長が低くないといけないポジションというわけではありません。ポイントガードは、いわばチームの司令塔的存在であるポジションです。

そんな重要なポジションのために、身長が低いという理由で自分を選んでくれたことに、心から感謝せずにはいられませんでした。その思いにこたえるべく、全力で練習に取り組み、試合にも全力でぶつかっていきました。たった2年間でしたが、ますますバスケットボールが好きになり、身長が低くてもバスケットボールを楽しめるということを心の底から感じることができました。

社会人になった今でもバスケットボールは続けていますが、あの時の体験は今の自分にとって、忘れられない貴重な体験であり、人生を左右するほどのものでもあったと思っています。

（管理者）
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